~スタッフレポート~ 「ワークショップを終えて」
情報学環・福武ホールにて、5月23日、第1回ワークショップ「イメージとしての開発-岩波映画・佐久間ダムを見る-」が開催されました。2月に行われたキックオフ・シンポジウムから、早3ヵ月。第1回ワークショップでは『佐久間ダム』を中心に取り上げました。当時『佐久間ダム』にかけられた製作費は莫大で、しかも、この産業記録映画を全国約300万人が見たというから驚きです。
本ワークショップでは、この『佐久間ダム』(第一部および総集編の一部)を視聴した後に、カメラマンの小村静夫氏から撮影の秘話や当時の岩波映画製作所の実情、その後、町村敬志氏(一橋大学)から『佐久間ダム』がどのように観せられ/観られてきたかに関して、続いて藤井仁子氏(早稲田大学)から映像テクストとしての『佐久間ダム』が現代にどのような意義をもたらすのかに関しての報告がありました。
正直に言いますと、『佐久間ダム』を見る前、私はあまり期待していませんでした。現代の若者はダムのような無機質なものをただ鑑賞することに抵抗感があるのかもしれません。けれども、見終わった後はかなり衝撃的でした。圧倒的に面白かった。
それは、発破による岩の破片を避けながら命がけで撮影したという小村氏のお話や、『ゴジラ』との深い関係(同じ伊福部昭による映画音楽など)にあるという町村氏の指摘などを受け改めて納得できましたが、やはり、この映画には「戦後日本とは何だったのか」、「開発とは何か」、さらには「人間対自然」、「日本対アメリカ」という興味深い問題を、その無機質さの背後に含有していることも要因の一つだと思います。こうした問題群を、本ワークショップ全体を通して、垣間見ることができたのではないかと個人的に感じました。
<東京大学大学院情報学環・丹羽研究室M1 松山秀明・著>
記録映画のアーカイブを活用して、映像を用いた多様な研究の可能性を再発見する連続ワークショップ、その第1回は、岩波映画製作所のコレクションのなかから、戦後日本を代表する産業映画のひとつ『佐久間ダム』を取り上げ、映像と戦後史の関係を検証します。
戦後日本で最初の巨大開発プロジェクトとして知られる佐久間ダムは、1953年に着工し、1956年に完成しました。この巨大ダムは当時「東洋一」の規模と謳われ、日本の戦後復興の象徴ともなりました。
この巨大ダム建設の全過程を記録した岩波映画『佐久間ダム』シリーズ(第1部、第2部、第3部、総集編)は、ダム建設を壮大な視覚的スペクタクルとして描き出し、産業映画としては異例の興行的成功を収めました。
『佐久間ダム』が映し出したダム開発のイメージは戦後の日本社会に何をもたらしたのか。この映画をいま改めて見直すことで何が見えてくるのか。今回のワークショップでは、日本が戦後復興から高度経済成長へと向かうなかで、このユニークなダム映画が果たした役割について議論します。
当時全国で300万人もの観客が見たと言われる『佐久間ダム 第1部』の原版は、残念ながら『総集編』製作のために解体され、失われてしまいました。今回は、55年前に複製された16ミリフィルムを使って、この幻の第1部を上映します。
主催:東京大学大学院情報学環(記録映画アーカイブ・プロジェクト)
ゲスト:小村静夫(元岩波映画製作所カメラマン)
藤井仁子(早稲田大学)
町村敬志(一橋大学)
入場無料・HPにて事前登録制
プログラム
13:30 | 開場・受付開始 |
14:00 | 開会 総合司会:丹羽美之(東京大学) |
14:10 | 映画『佐久間ダム』を見る 『佐久間ダム 第1部』上映(40分) *赤く退色した16ミリプリントでの上映となりますことをご了承ください。 『佐久間ダム 総集編』部分上映(20分) |
15:10 | 休憩 |
15:30 | パネル・ディスカッション パネリスト:小村静夫(元岩波映画製作所カメラマン) 藤井仁子(早稲田大学) 町村敬志(一橋大学) コーディネーター:鳥羽耕史(徳島大学) 聞き手:筒井武文(東京藝術大学) |
18:00 | 終了 |
展示構成:鳥羽耕史(徳島大学)
主催:記録映画保存センター
共催 :株式会社21インコーポレーション
詳しくは記録映画保存センターHPをご覧ください。